新年が始まったと思っていたらあっという間に1ヵ月が過ぎてしまいました。年々時がたつのが速く感じられます。新型コロナが世に出て早3年、学校生活などでも色々な制限や閉塞感のある状況がこれだけ続くと子ども達のコミュニケーション面等の大事な発達にどれだけの悪影響があるのか心配になります。
ところで、少し前に当院で予防接種の際にお子さまがなるべく痛みが少なくなるよう取り組んでいます、という内容を書いたことがありました。もちろん痛みがなくなるわけではないし、初めから恐怖心が強くどうしようもないこともあります。それでも少しでも痛みが軽減できて苦痛を和らげることが出来ればと取り組みを続けています。
先日クリニック目安箱に、「いつも嫌がっていた注射を泣かずに受けられて、また次もがんばる、という前向きな言葉も聞けました。」という内容のご意見をいただきました。大変嬉しい出来事で、頑張りが報われた気持ちです。ありがとうございました。
振り返ってみると、大学で研修医を始めた頃、当然ながら採血などの処置はうまくいきませんでした。入院中のお子さまの朝の採血がうまく取れず、最初は我慢してくれていた子どもが「いつもの先生に替わってよ~」と泣き出す中、「ごめんね、ごめんね。」と言いながら処置して回っていました。こんな経験から、採血や点滴などの処置は極力1回ですんなり終わらせる、ということが目標になりました。
子どもの血管は大人のように目に見えず浮き上がっても来ないことが多々あります。ムチムチの赤ちゃんの血管は外観ではまったくわかりません。ではどうやって血管の位置を探すかというと、指先で触って圧迫してムチムチの中に走行している血管の弾力を感じ取ります。私の場合は右手で針を持つので、左手の人差し指の指先に全神経を集中させて血管の弾力を見つけます。
暇があれば血管の弾力を探して左手の人差し指で自分の右腕を見ずに触るようになりました。だんだん慣れてくると、血管の走行の方向や深さも感覚的に掴めるようになってきました。深い血管に刺す時は角度を付けて針を進める必要があります。また、血管の端を針で傷つけてしまうと周りに血液が漏れ出て内出血になってしまって失敗します。しっかり血管腔の中に針先を入れるためには太さが1~2mm程度の細い血管でもそのほぼ真ん中に刺すことが望ましいため、刺す位置は0.5mm単位くらいで慎重に決めます。
いつしか勤務していた病院では採血や点滴が取れない時は山城を呼べ、と言われるようになりました。研修医の時に泣きながら我慢してくれた子どもたちのおかげです。
でもいまだに左手の人差し指以外の指では上手く血管の感触を感じ取れません。これがなくなったら困ってしまいます。