少し前に某5歳児に叱られるTV番組で、なぜおじさんはおやじギャグを言うのか、というのをやっていました。
それによると、おじさんは徐々に脳の前頭葉の機能が衰えてくるために前頭葉の機能のひとつである抑制機能が弱くなり、そこに長年の経験から得たたくさんの語彙の知識が加わることで、その時に聞いた言葉に対して似たような音の単語が抑制されずに口をついて出てくる、ということでした。なるほど。
そもそも前頭葉は脳の中でも生物学的に新しい部分で、「人間らしさ」に関係していると言われています。つまり、人間のように大きな社会の中で生きていくためには自分の本能的な欲求をある程度抑制して社会のルールに従っていく必要があります。また、人と人とのコミュニケーションをとるうえで周りの状況を踏まえたり、相手の顔色を窺ったりと人間関係を円滑に進ませるために重要な部分と言えます。
小児の領域では、注意力が散漫で落ち着きのないAD/HDという病態や、コミュニケーションが苦手な自閉スペクトラム症と言われるものがこの前頭葉の機能と関係していると言われています。ただし、じっとしていられない子が皆AD/HDかというとそうではなく、例えば運動が得意な子もいれば苦手な子もいる、勉強が得意な子もいればそうでない子もいるのと同じように、脳の機能として前頭葉の機能も優れている子もいれば苦手な子もいるのがあたりまえで、「苦手な子=病的」ではなく程度によります。そして運動も勉強もがんばれば伸びていくように子どもは成長とともに脳の機能も発達していきます。また成長や発達は早い子もいればゆっくりな子もいるので長い目でみてあげる必要がある場合もあります。
話を戻して、高齢になると加齢とともに脳の機能は当然落ちてはいきますが、おやじギャグを連発するおじさん達が皆抑制機能が落ちて本能のままに生きているかというとそうではないと思うので、前頭葉とひとくくりでのことではなくその中の細かい部分部分のことなのだと思います。いずれにしても場を和ませようとしたり皆を楽しませようとしてのおやじギャグだと思いますので温かく見守ってもらえれば、と思います。
少し前に歩き始めくらいの歳のお子さまが受診された時に、サメの絵がたくさんプリントしてあるズボンを穿いていて、「ああ、これはあれだね、あんよは上手(ジョーズ)ってことだね。」と言ったら冷たい空気が流れました。私の前頭葉もだいぶ衰えているようです。温かく見守ってください。