きまぐれ日誌

2018.12.12

学会にて ~食物アレルギー~

先日千葉で開催された学会に参加してきました。食物アレルギーの発症予測と題した講演があったので朝一番の講演でしたが是非聞いて来ようと意気込んで行きました。

まずは赤ちゃんの時に皮膚の湿疹が強いお子さんはアレルギーのハイリスクになるということ。これは、そもそも皮膚は人間にとって鎧のようなもので、鎧が傷ついて壊れてしまっていては菌やアレルギー物質など色んなものが体に入りやすくなってしまう、ということになります。このことは以前から認識していたことで、普段の診療の中でも「赤ちゃんの頃からのスキンケアは大事ですよ」とお話ししています。

斬新だったのは、痒みを伴う湿疹がある赤ちゃんはアトピー性皮膚炎としてしっかり治療しましょう、ということでした。以前は、赤ちゃんは多かれ少なかれ皮膚は乾燥肌で敏感肌で荒れやすいから乳児湿疹という言葉があって、1歳以前にアトピーという診断がつくのはよっぽどひどい場合だよと教わった気がします。つまりそれくらい乳児期のスキンケアがその後のアレルギー発症に対して重要という認識になってきたということです。

そしてもう一つ驚いたことがあります。「ウチはアレルギーが心配だから1歳過ぎるまで離乳食は与えずにミルクだけでいきます」という親御さんの言葉は何度も聞いたことがあります。実際に離乳食全部とは言わなくても卵は与えない、などということは結構あるのではないでしょうか?

私も乳児健診などの際に、「ミルクだけでも栄養的には問題ないから離乳食は慌てなくてその子その子のペースでいいですよ。むしろ離乳食を始めたからといって哺乳量を減らしてしまうと体重増加が悪くなることがあるから気を付けてください。ただしモグモグしてゴックンする口の動きはその後の言葉の発声にも繋がるから口慣らしはしていってくださいね。」というような説明をしていました。

しかし今回の講演では、1歳過ぎまで卵を与えなかった赤ちゃんと、6ヵ月頃から少しずつ卵を与えていた赤ちゃんを比較すると、1歳過ぎまで与えなかった赤ちゃんの方がその後の卵アレルギー発症率が2倍以上高かった、ということが証明されたというのです。同じようにピーナッツクリームを与えていた赤ちゃんのほうが後のピーナッツアレルギーを発症しにくかったそうです。

もちろん症状が出てしまうものは食べてはいけないので、例えば卵なら生や加熱した卵でも症状が出るならそれは避ける必要があります。でも、卵が練りこまれたパンやクッキーなら食べても大丈夫、というならむしろそういう食材は積極的に食べたほうが将来的に卵アレルギーがなくなりやすい、という話しは今までもしていました。

結論としては、卵アレルギー発症の確率を下げたいのであれば、6ヵ月頃からしっかり加熱した卵を少量ずつ離乳食に入れていくのが良い、ということでした。

医療の常識というものは私が医師になってからもどんどん変わっていて、今回も新しい衝撃でした。やはり新しい情報はどんどん勉強していかなければいけない、ということと、これからは乳児健診の時に、「離乳食は慌てなくていいけど、アレルギーの観点からは色んな食材を少しずつでいいから食べさせてあげてくださいね。」と言わなければならないと思いました。

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